2022年9月15日発売
限定5000部
GRAND MICHELIN(グランミシュラン) ミシュラン調査員のことば
定価11000円(本体10000円+消費税1000円)
著者:フィリップ・トワナール他13名
監修:フィリップ・トワナール
翻訳:田中裕子
判型:305mm×235mm 上製本
388頁
ISBN 978-4-910204-06-2
ある者はサンフランシスコへ、ある者は上海へ、またある者はパリへ……。これはという店を探し求めて世界じゅうの料理を食べ歩いている。すべては読者のみなさんのために。
調査員のタイプは違っても、求めているものはみな同じだ。これまでになかった味や新しい才能をもつ料理人を探しつづけている。わたしたちを駆り立てるのは、ガストロノミーへの飽くなき情熱だ。
調査員は、ふつうの客と同じようにレストランを訪れ、自分たちで代金を支払って食事をする。五感をつねに研ぎ澄ませながら、年間250食を味わっている。これは「星」探しの旅なのだ。ひっきりなしにあちこち動き回りながら(ひとり当たり年間約3万キロの距離を移動する)、あらゆるものを食べ、さまざまな味にチャレンジする。
一見したところ奇妙に思われるものでも果敢にトライする。わたしたちの旅の手帳には、数多くのエピソード、出会い、思い出が綴られている。
本書では、わたしたちの旅の記録をみなさんにお見せしたい。世界の料理を楽しみながら、さまざまな喜び、感動、ホスピタリティ、愛情を味わってほしい。今回ばかりは、わたしたちからこう言わせてもらいたい。「ボナペティ! どうぞ召し上がれ!」
―ミシュランガイド調査員一同
本書ではミシュランガイド発行国の世界25カ国フランス、イタリア、ベルギー、スペイン、ポルトガル、英国、ポーランド、ハンガリー、オランダ、ルクセンブルク、チェコ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、オーストリア、スイス、アメリカ、ブラジル、日本、中国、台湾、シンガポール、タイ 韓国にいたるまでの、ミシュランガイド調査員たちの旅の軌跡を追う。彼らが世界じゅうで見たり、発見したり、味わったりしてきたものを知り、さまざまな料理がどうやって生まれたかを理解すれば、それらの料理をいま以上に深く味わえるようになるはずだ。
アイルランドでラングスティン(アカザエビ)の料理を味わうなら、スコットランド沖で行なわれているカゴ漁のテクニックを覚えておこう。
スペインのバルでタパス(小皿料理)に舌鼓を打つなら、店主による料理の説明が理解できるよう、さまざまな種類のハムについてあらかじめ知っておくのが望ましい。
フランスでは1200種類ほどのチーズがつくられており、イタリアでは400種類ものチーズが作られている。とりわけ、イタリア独自のチーズ製法、パスタ・フィラータによって作られるチーズが多い。
そして最後に、フランスについては、国じゅうのほとんどの地域で無塩バターを使っているのに、北西部ではなぜ有塩バターを使うのか、そして地中海沿岸ではなぜバターを使わないのか、ぜひ説明できるようにしておきたい。
L'OUSTAU DE BAUMANIÈRE
Les Baux-de-Provence France
ここ数年、野菜を自ら栽培するシェフが急増している。いまブームのロカボリズム(地産地消主義)に対応するため、手間ひまかけて野菜を育てたいから、新鮮な野菜を使いたいから、などその動機はさまざまだ。
LA MARINE
L'Herbaudière France
大西洋に浮かぶノワールムティエ島の先端には、アレクサンドル・クイヨンの「ラ・マリーヌ」がある。海の幸は毎朝届けられるが、何が水揚げされるかは当日までわからないため、毎日即興で料理をつくる。不足分は自家菜園の野菜やハーブで補っている。
LE TAILLEVENT
Paris France
2018年、メートル・ドテル部門でMOF(フランス国家最優秀職人章)を獲得した「ル・タイユヴァン」のディレクトール、アントワーヌ・ペトリュスによると、現在のサービスには「専門性、熟練性、社交性」が必要だという。
本書を読めば、ニューヨークの古い食文化が垣間見られるデリカテッセンや、ルイジアナ州のケイジャン料理とは実際にどういうものかを知ることもできる。
かつて中国料理は、西方系(四川料理)、北方系(山東料理)、東方系(江蘇料理)、南方系(広東料理)と、中国全土共通の薬膳を合わせた5つに分けられていた。
ブラジルのリオのカーニバルを見に行くなら、焼肉料理の店でもシュラスカリアとホジージオはどう違うか、居酒屋のボテッコとブチキンの違いはどこにあるか、本書であらかじめ確認しておきたい。
~星を獲得したベジタリアンレストラン
Milan, Italy
「ジョイア」のシェフ、ピエトロ・レーマンは、現在のベジタリアンブームの先駆者だ。自身の信念と仕事とのバランスを取るにはどうすればよいか、哲学的・精神的に長くじっくりと熟考した末、彼はアジアと東洋の文化を学ぶ旅に出た。こうして現地で見聞を広めながら、日本の食文化、中国の食事療法、アーユルヴェーダの料理を深く理解するようになった。その後ヒンドゥー教に改宗すると、自らの料理哲学も自然とそちらへ向かっていった。
〜型破りなレストラン
上海, 中国
フランス人の料理人、ポール・ぺレがシェフを務める「ウルトラバイオレット」でのディナーは、誰にとってもこれまで味わったことのない体験となるはずだ。まず、上海の中心街にあるペレ経営の別のレストラン「ミスター・アンド・ミセス・バンド」へ向かう。一晩の予約は10人限定だ。およそ20皿で構成されるコース料理が提供されるという。その後はミニバスに乗せられて最終目的地へ。簡素な駐車場で降ろされ、建物のエントランスへと誘われる。やがて一同はようやく建物の「至聖所」にたどり着く。指定された席に全員がついた途端、ショーが始まる。これは、ひと言では言い表せない五感に訴えるエンターテインメントだ。
フランス人シェフたちは、日本料理独特の技術を生かした調理法、盛りつけにおけるナチュラルな美的センス、正確なデクパージュ(切り分け)、完璧な火入れ、誰もがハッとするような調味料の組み合わせによる味付けなどを、日本人シェフたちから学んでいる。
本書ではフランスで星をとった日本人シェフのお店15軒を紹介。
香港, 中国
タイのバンコクにフランス料理学校のコルドンブルーがあると知って習いに行くことに。当時は「料理をおいしく作れるようになりたい」という理由で数回だけ通うつもりだったという。
San Francisco, U.S.A
1998年、いろいろなものに囚われているように見えたフランス料理から抜け出したくて、単身サンフランシスコにやってきた。そしてカリフォルニアのファーム・トゥ・テーブル(農場直送ダイニング)運動の先駆者であるジェレミア・タワーの店で働きはじめた。
Valence, France
フランスが誇る美食の町、ヴァランスにある「メゾン・ピック」は、1934年に祖父のアンドレが、そして1973年に父のジャックが3つ星を獲得している。本来なら、アンヌ=ソフィの順番は永遠にやって来ないはずだった。すでに他の職に就いていたからだ。だが、きっと厨房に呼ばれる運命だったのだろう。1992年にジャックが急死し、「ピック」は1995年に3つ星を失う。ようやく跡を継ぐことにした娘はみるみるその才能を発揮して、2007年に3つ星を奪い返した。現在、ヴァランスの他、パリ、ロンドン、ローザンヌの店で合計8つの星をもつ天才女性シェフは、ミシュランガイドのフランス版に2018年に初めて導入された後見制度の初代後見役として、若手に貴重なアドバイスを与えるにふさわしい立場にいる。
ルイ14世が即位すると、食事はセレモニー化された。招待客が見ている目の前で食事をするグラン・クヴェール(公式晩餐)という儀式では、みなが圧倒される豪華で多様な料理が供された。ところがルイ14世自身は、造園家のラ・カンティニが設計した菜園「ル・ポタジェ・デュ・ロワ」で栽培される野菜とフルーツ、とくにフレッシュなグリーンピースに目がなかったという。
スペイン
ぺルセべス(カメノテ)と呼ばれるこの奇妙な甲殻類、スぺインでは大変好まれている。家庭では塩茹でにして、常温で、または冷やして食べる。食卓でこれが出ると静かな戦いが始まる。これほど人気が高いのに、レストランのメニューにはあまり登場しない。一部のシェフが、スパイスと一緒にポワレにしたり、他の貝類と一緒にサラダに入れたりして提供している。
イタリア
シチリア島のお菓子はシンプルだけどとてもおいしい。現地のアイスクリーム店には必ず置いてある、ブリオッシュ・コン・ジェラート(ブリオッシュにアイスを挟んだもの)もそのひとつだ。あとはもちろん、カンノーリ。「小さな筒」という名前のお菓子で、小麦粉、ワイン、砂糖、ラードを合わせた生地を丸くくり抜き、木製の棒に巻きつけて筒状にしてラードで揚げる。
ブリーチーズはカール大帝とアンリ4世の大好物だったとされる。ブリー地方のすべての村がそれぞれ独自のブリーをつくっているため、40種類ほどあると言われている。
32個の星を誇るジョエル・ロブションは、フランス北部伝統のラット種のジャガイモを使って伝説のピューレをつくったことで知られる。
次々と登場する知る人ぞ知る銘柄やワイン醸造テクニックなど、その専門性と正確な描写は、ワイン専門家が舌を巻く内容だった。
クリストファー・クータンソー
CHRISTPHER COUTANCEAU
La Rochelle, France
ラ・ロシェルでレストランを営むクリストファー・クータンソーは、十数人の料理人仲間と共に、欧州議会で電気ショック漁法が禁止されるようフランス政府に働きかけを要求し、2021年にはEUで電気ショック漁法が全面的に禁止される運びとなった。海洋環境の保全に取り組むシェフたちのように、わたしたちも海産物の消費方法を考え直さなくてはらない。すでに、一般的に人気が高いスズキ、マグロ、シタビラメなどを使うのをやめて、ボラ、ホウボウ、アジなどのこれまで捨てられていた魚をメニューに加えた料理人は多い。